【この記事を書いている人】
薬局で、医療事務さんの隣で働いてきました。未経験で入ってきた新人さんが、最初の数か月をどう過ごし、どんなときに辞めていくかまで見てきた立場です。
「医療事務に転職したいけれど、ネットで『やめとけ』『きつい』って見て不安になった……」
「実際のところ、何がそんなに大変なの?」
未経験から目指しやすい人気の事務職として知られる「医療事務」ですが、ネットで検索するとネガティブな噂も目立ちますよね。
結論からお伝えすると、医療事務には確かに「特有の大変さ」があります。ただし、それが「向いていない」という意味にはなりません。大変さの中身を知っておけば、避けられるものと、覚悟しておくものを分けられます。
この記事では、医療事務が「やめとけ」と言われる理由を5つに分けて、実際のところどうなのかを整理します。
私はこの5つを、いずれも隣で見てきました。そして、辞めていった人が共通してつまずいていたのは、5つの理由そのものではなく、その前に「誰に聞けばいいか分からない」状態になったことでした。大変さより、孤立のほうが効いてくる。これが、隣で見てきた実感です。
医療事務は、なぜ「きつい」と言われるのか
まずは、なぜ医療事務が「きつい」と言われてしまうのか、具体的な5つの理由を見ていきましょう。
① レセプト(請求)期間の残業・忙しさ
医療事務の仕事で最も忙しいのが、月末から翌月10日頃にかけて行われる「レセプト(診療報酬明細書)業務」です。
患者さんが受けた診療内容を点数化し、保険者に請求する大切な作業ですが、ミスが許されないうえに期日が決まっています。そのため、この期間は残業が発生しやすくなります。
薬局にも、他の医院の事務さんから書類や電話が来ます。月初の電話口は、いつもの倍くらい急いでいる印象があります。日中は受付と会計で走り続けて、終わってからレセプトの点検が載ってくる。この時期だけは、休憩の取り方まで変わるのだろうと思います。
② 覚えることが多い(専門用語・保険制度)
医療事務は、ただ座って受付や簡単な入力をするだけの仕事ではありません。
- 複雑な保険証の種類や負担割合の計算
- 病名や薬、処置などの医療用語
- 定期的に行われる診療報酬の改定
未経験で入社した場合、最初の数ヶ月は「覚えることが多すぎて頭がいっぱいになる」と感じる人が多いです。
ここは、具体的に書けます。未経験で入ってきた事務さんが最初の1か月で止まっていたのは、入力の操作・薬や病名の言葉・保険証と公費の確認の3つでした。
入力は、画面に慣れるまでは1件ごとに手が止まります。薬や病名は、聞き慣れない言葉が多すぎて、会話の中でも固まります。保険証は種類が多く、どこを見ればいいのか分からない。
この3つは、たいてい2〜3か月で急に軽くなります。問題は、その前に「もう無理」と決めてしまう人がいることです。実際、そこで踏みとどまった人は、あとから伸びていきました。覚える量より、覚えるまでの自分の扱い方のほうが大事だと感じています。
③ 女性が多く、狭いコミュニティでの人間関係
医療事務は女性スタッフが多い職場が多く、特に個人クリニックでは受付スタッフが2〜4人程度の少人数の環境です。
チームワークが良い職場なら、アットホームで働きやすいです。ただし、「スタッフ同士の相性が合わない」「院長先生と合わない」という場合、逃げ場がなく負担を抱えやすいのが「やめとけ」と言われる要因のひとつです。
これは薬局も同じです。薬剤師1人と事務1人、合わせて2人で1日を回す店舗だと、どちらかが不機嫌な日は、その空気が閉店まで続きます。逆に、息が合う相手だと、忙しい日でも意外と乗り越えられます。
だから私は、面接のときに「一緒に働く人に会えるか」を聞いてみるのがいいと思っています。給与や勤務時間より、ここで決まる部分は大きいです。
④ 責任の重さに対して給料が高くない
お金を扱う会計業務や、ミスが許されない請求業務など、責任のある仕事を任されます。そのわりに給料が高いとは言いにくい、という声があります。
参考として、dodaのデータでは医療事務の平均年収は294万円(2023年9月〜2024年8月のデータ)という数字があります。データが少し前なので、実際の金額は求人票で確認してください。
「一般事務と比べて、そこまで高くない」と感じてギャップを覚える人もいます。
⑤ 患者さんからの理不尽なクレーム対応
病院やクリニックに来る患者さんは、体調が悪かったり不安を抱えていたりして、気が立っていることも少なくありません。
- 「待ち時間が長すぎる!」
- 「なんでこんなに会計が高いの?」
こういった不満が、医師ではなく最初に対応する受付にぶつけられることがあります。臨機応変な対応と、クレームを抱え込みすぎない距離の取り方が必要です。
薬局のカウンターでも、まったく同じことが起きます。待合に患者さんが残っているときの空気は、こちらにも伝わってきますし、待ち時間の長さがそのまま受付に向く場面を何度も見ました。
隣で見ていて思うのは、上手な人は「怒られている」と受け取っていないということです。体調が悪い人が、いちばん近くにいる人に言葉をぶつけているだけ、と切り分けている。だから引きずらず、次の患者さんに笑顔で「お待たせしました」と言える。この切り替えの速さが、長く続く人の共通点だと感じています。
実際はどうなの?医療事務で働く3つのメリット
ここまで大変な理由をお伝えしましたが、それでも医療事務が選ばれているのには、それに見合うメリットがあるからです。
① 全国どこでも働けて「一生モノのスキル」になる
病院やクリニックは全国どこににもあります。一度医療事務の経験を積めば、結婚や配偶者の転勤、引っ越しがあっても次の職場を見つけやすいのが強みです。
② 雇用形態(正社員・パート・派遣)の融通が利きやすい
医療事務はフルタイムの正社員だけでなく、午前のみ・午後のみの短時間パートや派遣など、多様な働き方が選べます。「子どもが小さいうちはパートで」「子育てが落ち着いたらフルタイムで」といったように、ライフステージの変化に合わせて働き方を変えやすい仕事です。
これは隣で見ていて、本当にそうだと思っています。同じ薬局のカウンターに、正社員の事務さんとパートの事務さんが並んで立っています。家庭の事情で勤務日数を減らしても、また戻ってこられる。この戻りやすさは、他の職種ではなかなかない強みだと思います。
③ 未経験・無資格からでも挑戦できる
専門的な仕事でありながら、必須となる資格はありません。無資格・未経験でも応募できる求人も多数あります(出典1)。前職の職種を問わず、応募できる幅が広い仕事です。
医療事務が「向いている人」と「向いていない人」
自分が医療事務を目指すべきか迷っている方は、次の特徴をチェックしてみてください。
医療事務が向いている人
- 人と接するのが好き・接客や販売の経験がある人(受付対応で強みを発揮できます)
- コツコツとした計算やパソコン入力が苦にならない人
- 感謝されることにやりがいを感じる人
- ライフステージが変わっても長く働き続けたい人
医療事務があまり向いていない人
- 人と話すのが極端に苦手な人(「座りっぱなしで誰とも話さない事務」を想像しているとギャップがあります)
- 専門用語の勉強や新しいルールを覚えるのが面倒な人
- 最初から高収入・大幅な昇給を狙いたい人
隣で見てきた限り、あと2つ足したいところがあります。「分からないことを、その場で聞ける人」と、「急かされても手が乱れない人」です。
向き不向きは、性格というより、この2つを持っているかどうかで決まるように見えました。長く続いている事務さんに共通していたのは、分からないことをそのままにせず、その場で聞くことと、メモを取って自分で見直すことでした。最初から全部できる人はいません。続いている人は、分からないままにしない人でした。
「やめとけ」を回避!働きやすい職場を見極める3つのポイント
「きつい」と感じるか「働きやすい」と感じるかは、どんな職場を選ぶかで大きく変わります。応募する前に、次のポイントをチェックしておきましょう。
1. 「クリニック」と「総合病院」の特徴を理解する
- 個人クリニック:業務が多岐にわたるが、残業は少なめ。アットホームな環境で働きたい人向け
- 総合病院(大病院):業務が分業化されておりマニュアルが整っている。福利厚生が手厚いが、患者数が多く忙しい
未経験から教育を受けたい場合は「総合病院」、家庭と両立しながら地域密着で働きたい場合は「クリニック」という選び方があります。
2. 募集背景(増員か欠員か)を確認する
求人票を見るときは、なぜ募集しているのかを確認しましょう。
- 「患者数増加による増員募集」:職場が安定しており、余裕を持って教えてもらえる可能性が高い
- 「いつも同じ求人が出ている」:スタッフの入れ替わりが激しく、労働環境に課題がある可能性があるため慎重に見極めたい
面接のときに、私は「辞めた人が何人いるか」を聞いてみるのもいいと思っています。人が長く残っている職場は、給与以外の部分も整っていることが多いからです。
もう1つ。ドラッグストア併設の店舗と処方箋専門の店舗では、1日の景色がかなり違います。物販の仕事が入るかどうか、処方箋の枚数がどれくらいか。この2つを聞いておくと、入ってからのズレが減ります。
3. 面接時に「受付やスタッフの雰囲気」を観察する
面接で病院やクリニックを訪れた際は、ぜひ受付スタッフや待合室の様子を観察してみてください。
- スタッフ同士の挨拶や言葉遣いが、ぎすぎすしていないか
- 患者さんに対して丁寧で落ち着いた対応ができているか
現場の空気を見ることで、自分に合いそうな職場かどうかを感じ取ることができます。
まとめ:医療事務は「特徴を理解して選べば」長く働ける
医療事務は「やめとけ」と言われることもありますが、その原因の多くは「業務の大変さを知らずに入職してしまったこと」や「職場の雰囲気が合わなかったこと」にあります。
- レセプト時期の忙しさや勉強は必要
- しかし、全国どこでも通用するスキルが手に入る
- ライフスタイルに合わせて柔軟に働き続けられる
隣で見てきた立場から最後に1つ。「この忙しさでこの金額か」と感じる瞬間は、確かにあります。それでも続いている人は、隣にいる人との関係が良かった人でした。給与や勤務時間を比べたあとに、そこだけは最後まで想像してみてください。
大変さは、選び方で減らせます。減らせないのは、分からないことを抱えたままの数か月だけです。そこだけは、その場で聞いてしまってください。
仕事の現実を理解したうえで準備を進めれば、未経験からでもスタートできます。「未経験から医療事務を目指してみたい」と思った方は、次のステップも確認してみてくださいね。
出典
- 医療事務として必須の資格がないこと・資格手当がある場合があること
https://karu-keru.com/info/job/mc/medical-office-not-qualified - レセプト業務が集中する時期(月末〜翌月10日頃)
https://iryo.nichiigakkan-careerplus.jp/index.cfm?fuseaction=contents.fcts&cid=1469 - 医療事務の年収(doda・2023年9月〜2024年8月/平均年収294万円)
https://www.co-medical.com/knowledge/article253/


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